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アパイニNo.7トランス

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バリでは寺院祭礼や儀式の中で、また日常生活でも突然大声で何かを叫び始めたり踊り狂ったりし始める人々がいます。これは実はある種の忘我状態であるトランスに入った人々なのです。バリではそんなトランスを『クラウハン』と言います。クラウハンをインドネシア語に訳すと『Datang』=『来る』という意味になります。人間の肉体を器として別のスピリットが入り込む状態で、そのスピリットは良いもの、そして悪いものの両方の場合があるのです。

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APA INI豆知識!

クラウハンは意図的にトランスを起こす場合と突然トランスに入ってしまう場合の2種類に大別できます。

【意図的にトランスを起こす場合】

◆寺院祭礼の際に神々を寺院に呼び、祭礼の準備に不備がないか、または、村に対するご神託を伺う場合。→(ニャンジャン:目を閉じて座ってご神託を村の人々に伝える)
◆寺院祭礼の際に地に棲まう精霊たちが大人しくしてくれるように、人間の体に入ることで直接供物を捧げ、彼らのパワーを村の人々に見せつけて敬意を払うようにするためにトランスを起こす場合。→(ナラット:聖剣クリスを胸に突き立てる。生きたニワトリや生卵、ヤシの実をそのまま齧って飲む。サンヒャン・ジャラン:火の中を裸足で走り回ったり、火を食べる)
◆寺院祭礼の際に村のパワーをニュートラルに調整する儀式を行う場合。
→(チャロナラン、サンヒャン・ドゥダリ、サンヒャン・レゴン、サンヒャン・デリン:初潮前の少女の舞い)
◆子供が生まれた際に、誰の生まれ変わりか僧侶がご先祖様に伺う場合。
◆亡くなった人が葬儀に関しての希望や残された家族に伝言があるか僧侶が故人に伺う場合。
◆葬儀の後に故人が思い残すことがあるか僧侶が故人に伺う場合。
→ヌメガ:故人の言葉を霊媒を通して聞く。

これらの意図的なクラウハンを起こす場合は、聖水、火(煙)、花、マントラ(真言)を使い、時としては被り物や馬を模した乗り物のような物などの神聖な物を使用する場合もあります。

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【意図的ではなく、突然トランス状態に入る】

◆寺院祭礼の際に突然神様や精霊が入り込む場合。
◆神様が場所や人に不満を持っている場合や要望がある場合に人間の体を借りてそれを伝える場合。
◆ブラック・マジックなどのネガティブなエネルギーが入った場合。

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Writers Voice 日常の中のトランス

バリ語とインドネシア語しか話せない老人がトランスに入った途端に急に中国語やオランダ語を話し始めたり、火を食べたり、剣を胸に突き刺したりするのを実際目の当りにしても外国人としてはちょっと理解し難い光景だったりするのですが、バリ人の見慣れた様子を見ていると、トランスも身近なものなんだなぁ~と感じます。トランスに入った経験がある人にその間のことを聞いてみると、『何も覚えていない』、『波に漂うようにユラユラしていた』という風に感じる人もいるようです。クラウハンはバリの人々であっても、全ての人が体験できるわけではない不思議な状態なのです。

●注:こちらのコーナー記事の情報は地域によって差があることもございます。

Photo & written by CHIE