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ウブドより愛をこめすぎず 第18話

病室のクラクション

「親しくしてたバリ人から日本に連絡があって渡バリ。そんで土地借りてお店建てたら、そのままその人に取り上げられちゃったんだから。相当信頼してた相手よ。」「それって…。」「そう今回のあなたとおんなじ。それであいつも他人事に思えなかったみたい。」南田はベッドから体を起こして真由美の話に耳を傾けた。「日本であいつは会社をやっててね、わけのわからないアイディア商品を形にして売り出す会社だったんだけど私はそこの従業員だったの。そんで付き合ってたの。」少し聞いてはいたが、事情を聴くとやはり南田は驚いた。「けど会社がつぶれちゃったのよ。そんであいつは有り金全部持ってバリに飛んだわけ。私に給料も払わずにね。私も当時は必死で探して、それでバリまで追いかけてきたのよ。給料のためだったのか恋人としてだったのか今じゃわかんないけど。」真由美は懐かしそうに笑いながら話している。「でも調子のいい男だったからさ、バリで見つけた時になんて言ったと思う?『待ってたよ』だよ?信じらんない!」そういいながらさもおかしそうに笑っている。「筋金入りよね。もうすぐお店がスタートするから今度こそこっちで頑張ろうって。ちょうどお店の工事が終わりかけの時期だったの。けど結局お店は開くことなく終わっちゃった。」「それであんなに僕に親身になってくれたんですね。」「けどバリ人が皆そうなんじゃないよ。その後あいつは日本人にも騙されてるし。」「エェッ!」「ま、色々あったのよ。バリ人だから悪いわけじゃない、日本人だって一緒。ここは素敵なところよ。そのまま私が居ついちゃうくらいだもん。けどどこにだって良い人も悪い人もいる。それがわかるまではね、あなたも無理しない方がいいと思うんだ。」僕は無理なんて、と言いかけて南田は口をつぐんだ。『うまくいくことだけがうまくいく』と言ったマンクーの言葉が頭をよぎる。外からは車のクラクションが聞こえてくる。真由美はミノルの携帯に電話して確認をとると夕方に迎えに来ると告げて部屋を出ていった。
 そして夕方。南田が手持無沙汰に病室内をぐるぐると歩いてるところへミノルがやってきた。「なんだなんだ、元気そうじゃない!よかったよほんと、ゾンビじゃないよね?」「ほんっとにご迷惑おかけしてすみません。迎えにまで来てもらって…。」「いいのいいの。困ったときはお互いさまなんだから。インドネシア語でもサマサマ~ってね。夏だしね。」にやりと笑う陽気な顔に年相応のシワが刻まれているのに南田は初めて気づいた。
「そんでね。あのプトゥさん、今来てくれてるから。」 

つづく