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ウブドより愛をこめすぎず 第19話

虫の音と5本のビール

「スミマセンデシタ!ほんとにスミマセン…。」病室に入るとプトゥは南田の正面に立ち深々と頭を下げた。南田がそのままプトゥに椅子をすすめる様子を確認するとミノルは病室の外へと一人出ていった。
「それで?二人はちゃんと話せてたの?」真由美はカフェの店員が運んできた少しゆで過ぎのパスタを口に運びながらミノルに訊ねた。「そんなの知らない~、最後まで聞くなんて野暮でしょ。二人の問題だし。」病室で二人が話し終えると車で南田を宿まで送り、それから真由美に呼び出されて今は街はずれのカフェに来ている。「でもここまで関わってんだからさ~、あんたが間に入ってあげてもよかったでしょうに。」「大丈夫そうだったよ。そういう顔してたもん。」「は?あんたに人の何がわかんのよ!さんざん騙されてきたくせに。」得意げな顔で話すミノルに眉を上げる真由美。「お金は返すって言ってたしな。まあ誤解でもないから。お金使いこんじゃったのは。」“南田さんに説明させてホシインデス!”と昨夜プトゥがミノルに連絡してきた時の必死な声が蘇る。「まあね、でもこっちじゃ入院費ってほんとにバカになんないから。」「大家さんには話を通してたらしいぜ?ただあの爺さん耳ほとんど聞こえてなかったってさ。」「プトゥさんもそれはわかってたんじゃないの?」「でも伝わってるって信じたかったんだろ。じゃなきゃ子供の入院費払えなかったから。」「気持ちはわかるけどね。」「どうすんのかね?南田さん。」「さあねえ…。」ミノルは頬を撫でながら黙り込んだ。店内には二組ほどの客しかいないので人の話し声は少なく、会話がとまると名前のわからない虫の音が響いてくる。
「しかしまさかこんな形であんたと再会するとは思わなかった。狭いウブドでよくも会わなかったもんだ。」残ったビールをそれぞれのグラスに三㎝ほど注ぎながら真由美が口を開く。「ウブドの懐は深いからね。てか見かけたら逃げてたしね。」鼻のあたまにしわを寄せて憎たらしそうにミノルは返答した。「噂だけは聞いてるわよ。商売上手くいってんの?」「どうかな~。」「変わった仕事よね。プロポーズ屋さん?」「そ、バリであなたの素敵な求婚をプロデュース!先月は問い合わせが一件。」「あんた…。」「真由美も逆プロポーズしてみる?俺に。」「はあ?」「うそうそ、彼氏いるんでしょ?その人に。迷惑かけたこともあるから半額にするよ。」「迷惑なんてもんじゃないけどね、あんたがあたしにかけたのは。」その後も二人の会話は続き、帰ろうと席を立つ度に雨が降りだすので結局閉店になるまでに5本の大瓶をあけていた。

つづく