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ウブドより愛をこめすぎず 第4話

どんな乗り方したのよ?

  バイクに跨るとスターターを押してエンジンをかけようとしたが、何度かウィィンと音を立てたっきり反応がなくなった。「あ~あ、もう!」苛立ちながら真由美はキックを強くけりこんでエンジンをかける。中古で買ったボロボロのバイクは十年以上の年季物だ。そんなバイクに勇ましく蹴りこんでエンジンをかける自分に、女子力と呼ばれるものはどれほど残っているのだろう?と自問しながら真由美はハノマン通りに向かった。
 ハノマン通りはウブドの目抜き通りのひとつ。一番のメインストリートであるモンキーフォレスト通りと並行して南北に走っている。のんびりとショッピングを楽しみながら歩いている観光客も多いので当然地価も高く、人気もあるのでそうそう出店できるスペースも見つからない。しかしそこに降ってわいたように「格安物件が出た。」という情報が出てきたものだからそれを知る人間は驚いた。昨夜、たまたまその話を聞いた時こそ真由美は反応しなかったが、やはり心のどこかで引っかかっていた。なにか自分に縁のある話に思ったのだ。
 五分ほどバイクを走らせてウブドの中心地に近づくと突然、道の真ん中に人だかりができている。「これは誰か事故でもしたのかな?」と思いながらスピードをゆるめて通り過ぎようとすると、「ああ、マユミ!ヨカッタちょっと来て!」と人ごみの中から声をかけてくるバリ人がいる。「なんだコミンじゃない!どうしたの?」近づいていくと一人の日本人らしき男性が寝転んでいた。「この人がバイクでこけちゃったみたいなんだけどインドネシア語がさっぱりなんだよ~、英語も下手くそだし、何言ってるのかわからなくて。」
倒れている男性に目をやると身振り手振りを交えながら大げさな巻き舌で英語、らしき言葉でバリ人たちに話しかけている。「ノゥ~プロブルェーン、アイヲンゴー、シーアラーン■×△*◇△*…」戸惑うバリ人たち。
「…。オーケー、まかしといて。」と真由美はバイクから降りて倒れてる日本人男性に声をかけた。
「すみません、日本の方ですか?大丈夫です?」「ああ、日本人ですか?いや、よかった、アイテテテ・・・すいません、言葉が伝わらないもので困ってたんです。あそこの砂利で思いっきりスリップしてしまって」と体を起こしながら男は答えた。体の大きな男だ。「骨折、とかはなさそうですね。でもズボンがボロボロ。病院に行かれますか?」と言い、思わず股間に目が行った。彼のズボンは前と後ろの真ん中で見事に裂けていたのだった。

つづく